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我がプロジェクトでは、支援している地元漁協と一緒に、暫く前から淡水魚(コイやティラピアなど)の稚魚を育てる活動をやってきた。

その背景には、フエ市内にある種苗場から稚魚を買うと単価が高くつく上、質もまちまちで、買いに行くのも片道1時間位かかるという地元養殖民の声があった。さらに、最近組織された漁協では、まだ財政基盤も弱く、その強化は急務でもあった。

そこで、漁協のメンバーと協力して、漁協管理の種苗場(と言っても小さな池だ)を設立して、養殖民の協力下にそれを運営し、漁協のメンバー他に提供するという仕組みをつくることにしたのだ。

この種苗場ができることで、漁協メンバーは地元から市場価格よりも数割安く稚魚が入手可能になる一方で、漁協にとっても貴重な収入源になる(漁協の収入は水産資源管理に利用されることになる)。両者にとってメリットが出る仕組みという訳だ。

そして何よりも、初期投資さえ支援してやれば、後はリスクもそう高くないので、毎年漁協のみで運営していけるという利点もある。つまり漁協の自立支援の意味合いも大きいのだ。

そうこうして、漁協と準備を進めて数ヶ月後。

稚魚も良く成長して、さて売ろうというその時に、予想外の情報が飛び込んでくる。「地元で稚魚を買いたい人がなかなか見つからなくて困っている」。

あんなに稚魚を必要としていたのに一体どうしたことか?

よくよく調べてみて分かったのは、昨年にベトナム中部を襲った大型台風の「緊急支援」と称して、農協が地元の養殖民に無料で大量の稚魚をバラ撒いたらしいのだ。一体誰がスポンサーについていたのか分からないが、大分時間が経ってからの「緊急」支援である上、何よりも残念なのは、この「緊急支援」を装った活動が、地元養殖民が稚魚の自立的な供給を目指そうとする試みを妨害してしまったことである。

本来、モノを無料であげるという諸々の活動を含め、人道・緊急支援というものは、それがなければ人権や尊厳が侵されるという状況下でのみなされるべき性質のものである。言わば強度の痛みにさらされた患者にモルヒネを注射する様なものだ。なぜなら、そうした活動は問題を作り出す原因そのものを何ら解決しないどころか、そうした問題に直面した人々の自主的な取り組みを阻害するものであるからである。

平時に緊急支援と称して行われた全く「時期外れ」の今回の稚魚バラ撒きは、皮肉にも地元民の自立的な取り組みの成長を妨げてしまった。幸いにも、稚魚の生産をしている漁協は今後も活動を継続することを決めたが、提供する側の自己満足だけの「無料配布」はくれぐれも止めてもらいたいものである。

支援したいのは何なのか。タダであげるということの功罪を支援団体は今一度良く考える必要がある。
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